笹舟

流しにゆくのですか と聞かれ
流しにゆくのです と
暗がりに火を灯しながら
おそるおそる坂を下ってくると
柳の下に店が出ていて
ちりちりと風鈴を鳴らしている
これはどうですか と
差し出された笹の葉には
赤や青で何か書かれており
もうこの目では見えませんね と
暗闇で手探りをするように
それを舟の形にして
すれ違った手に渡せば
誰も知らない空に流れてゆく
流れてゆく姿が
鳥の影が離れる場所に
流れてゆくのですか
流れてゆくのですか と
わたしは立ちつくしている
そのような水辺で