『青白い炎』第一篇(その6)

微かな痛みの一筋が
戯れの死に引き寄せられ、ふたたび遠のきはするが
しかしいつでも存在していて、わたしを駆け抜ける。
ちょうど十一歳になったある日のこと
わたしは床にうつ伏せに寝そべって、ぜんまい仕掛けのおもちゃ――
ブリキの少年が押すブリキの手押し車――を見ていた。
それが椅子の脚を迂回してベッドの下に迷いこんだその時
突如として脳裏に陽の光が差した。
 
それからは闇夜。しかもこの上もない闇夜だ。
わたしは時空のいたるところに撒き散らされた気がした。
片足は山頂に
片手は波に濡れた浜の小石の下に
片耳はイタリアに、片目はスペインに
洞窟の中を血は流れ、脳は星となって瞬いた。
わたしの三畳紀は鈍く鼓動した。
更新世のはじめには目の端で輝く緑の斑点が
石器時代には氷のような悪寒が
そして肘の先の骨には未来のすべてがあった。
 
ある冬の間、いつも午後になると
そうした束の間の夢想に浸っていた。
いつしか夢は途絶えた。思い出もかすんでしまった。
わたしは健やかに育ち、泳ぎを教わりさえした。
けれども、汚れのない舌を用いることで
売女のみじめな欲情を慰めるよう強いられた小僧っ子みたいに
わたしは堕落し、脅かされ、誘惑された。
老医師のコルト氏が
募りゆく痛みの大半は取り除いたと明言してくれたのに
驚異の念はいまだ冷めやらず、恥辱は残り続けた。