栗原成郎「ロシア異界幻想」

 読了。序文で引かれてたソロヴィヨーフ「幻想論」が面白かった。単独の、孤立した幻想的現象というものは存在しない。存在するのは現実的な現象のみである(…)。そして「真に幻想的なるもの」を現実に関わり深いものと位置づける。著者は「あの世」が「この世」に深く関わっていることにおいて、それは「真に幻想的なるもの」であるとする。土着の信仰とキリスト教が習合した独特の世界観がいい感じ(「アガーピイの楽園への旅」を読んで「小さなトロールと大きな洪水」を思い出した)。けど全体を通してどこかエッセイ的で、一貫した主張は見えづらい。