ひそやかに行われる夏

ぬばたまの夜の水辺の手毬歌
首と首とが絡まり出会う


六月に目を閉じるきみの沈黙は
咲かない花のようなすずしさ


夕立ちの素早く逃げる藪の中
ボレロボレロただボレロボレロ


蛇を拾う山の道に誰もいない
西洋ハッカに包んで食べる


サンキュウと殴り書かれた片仮名が
黒板に白く廃墟の学校


見失う探せど探せど見つからず
いつのまにやら星空の下


赤土に足を取られるけもの道
誰かの髪を咄嗟につかんだ


一人きり海の彼方に雲を見る
太平洋を渡る水切り


閉じられた石の扉のむこうがわ
かすかに聞こえるジンタの響き


滝のそば誰かに呼ばれた心地して
振り向けばそこに巨人の足


杉木立に囲まれて空の井戸
いつまでも青い流星を追う