1月第3週

だれもがポオを愛していた (創元推理文庫)

だれもがポオを愛していた (創元推理文庫)

作者がアメリカ文学専攻とのことで、語りや会話、笑っていいのか判断に困るギャグにまで翻訳調をつらぬいているのは見事としか言いようがない。ポーの作品に見立てた殺人事件で、しかしながらおどろおどろしさはなく、解決に到るまで論理に牽引された明るさがあります(こういうのをパズラーと言うんですね)。巻末の「『アッシャー家の崩壊』を犯罪小説として読む」には笑わせてもらいました。
 
ヨーロッパのタピスリー (1984年)

ヨーロッパのタピスリー (1984年)

画面に充満したモチーフの隅々にまでピントの合った様が特有の幻想味を感じさせる。が、時代が下るとともに明暗やグラデーションが発達し、前景・後景も明確になって、絵画に接近していく。→表紙
 
斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

初めて「読者への挑戦」というものに出会って感心することしきり。なにかのパロディに達しているほどにステレオタイプな人物造形(曰く「あの二人は何となく除外できそうだ」)やユーモアを感じさせる筆致が楽しい。犯人のめぼしはついていたもののトリックがわからず、解説図を見て愕然とした。
 
ホビットの冒険

ホビットの冒険

十数年ぶりに再読。今になってみると、ゴクリから指輪を奪ったり、いがみ合っていた勢力の前に共通の敵が現れて軋轢がうやむやになったりするのは、生臭くて気になるところではある。おおむねつらい旅なのは良かった。
 
紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

最近のラノベで一冊ということで知人に勧められて。第一章でうまいけどそれほどでもないなぁなどと思っていたら、第二章でものすごい払い腰を食らわされた。小説家と呼ばれる人は文章がうまいだけじゃなくて、すごいこと書くから小説家なんだよな!と一人興奮。
 
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

初めての法月作品。最初から最後まで完全に後手に回っている。その原因があちこちに散りばめられた偶然や嘘や誤解なわけで、それが作者が評論で触れている問題なのだとしたら、事件を遅れて追う探偵の存在意義とは何なんだろう。ていうかもしかしていつもこんな感じなのかな。ダウナーな読後感は好み。