10月第2週

再読。街路樹の根元や公園など、意外と身近な場所にキノコの姿を見つけることができる。さらにもう一歩進んでキノコと土壌の関係に目を向けると、そこには豊かで多様な共生の世界が広がっている。普段あまりキノコを意識することはないのだけど生態系を見るという点でこの本にかなりの影響を受けていたかもしれない。読後は妙に足元が気になってきます。
 再読。スパイ大作戦+インディジョーンズといった感じで、それぞれ思惑のある5人がチームを組み、南米の古代遺跡の黄金をめぐる陰謀に挑む。チームといっても互いに騙し騙されの関係で、こういうのをコンゲームと呼ぶのかと思ったり。やたら饒舌で癖のあるキャラクターの掛け合いをこれまた饒舌な地の文で盛り上げて押し通すのが楽しい。B級映画っぽいチープさが気に入ってて時々読んでます。
 
泉鏡花 (群像 日本の作家)
津島 佑子
小学館
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鏡花について書かれた文章をあれこれ集めた本。いささか寄せ集め的で畑違いのものもあるので適宜飛ばして読んだ。論考もいいが当時鏡花と交流のあった人の証言がとても興味深い。今後は全集を読みつつ研究書など周辺の本にも手を広げていこうと思う。
種村季弘澁澤龍彦の論が特に重要。前者は鏡花作品における「水」を。(「水中生活への破局的な退行は古来妣たちの国へ下降していく逆行の旅の不可欠の前提であった。水にへだてられて陸上から孤絶した島ユートピアに水中生物への変身を通じて魔術的に往還したおびただしい伝説の主人公たちにとってそうであったように。」)後者では「迷宮」を検討する。「草迷宮」を「旅人が脱出することを欲しない迷宮」の物語と考え、往還することなくむしろ内側から退行の夢を見ているとする。水面(鏡!)に映る夢という考え方は鏡花を読む上で重宝する。
 
黒川能の世界
黒川能の世界
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馬場 あき子
平凡社
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うーん、よくわからない。黒川に特別な思い入れがある人でないとこの本は厳しいのではないか。少なくとも自分は(出版時の)黒川の閉鎖的な空気を強く感じた。面は素晴らしいのだが。
 
らくらく読める源氏物語
山田 真理
廣済堂出版
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『窯変源氏物語』を途中で脱落したのでこれでおさらいと続きを。あれほど権勢を誇っていた光の君の最後が巻名を残すのみであること、ならびに中途半端な形で物語が結ばれていることに大きな衝撃を受けた。下手すれば千年もこの空白を引き受けてきたのかと思うと絶句するしかない。
 
魑魅魍魎の世界―江戸の劇画・妖怪浮世絵
中右 瑛
里文出版
売り上げランキング: 274049
劇画・浮世絵のモチーフになった物語を簡単に紹介している。戯作文芸は詳細に見ていくと面白そうだ。
 
クモの巣と網の不思議―多様な網とクモの面白い生活
池田 博明 谷川 明男 新海 明
文葉社
売り上げランキング: 708032
網(巣)から見るクモの生態。網というのがミソで、門外漢からすればよくこの一事で一冊成り立っているなというのが正直なところ。ニッチな分野にも関わらずそれなりに愛好者がいて研究が進んでいるのがとても新鮮だった。こういう隙間を縫うような自然科学の分野って独特の面白さがあるなぁ。「クモの網標本」なんて思いもよらなかった。
出版社倒産で絶版のため、ウェブ版が公開されてます。
http://www.asahi-net.or.jp/~hi2h-ikd/asjapan/spiderwebikeda.htm
 人の心に届くいい文章を書くには「頭だけで書かず、心をこめて書く」のが大切である。いかにして心を育て、それを文章にしていくか……おろそかにしがちですが文章を書くことの本源に関わる重要な心得です。