10月第3週

再読。二十一世紀における神道の重要性を説く。が、著者の実感をとりとめなく書いているので、あらためて読んでこんなに脇が甘い本だったのかと驚いた(その分、インパクトはある)。「神道が神主(神がかりする者)だとすれば、仏教は審神者(神がかりを正しく査定し位置づける者)であり、その両方のバランスと統合が必要」とか書いてるくらいだからもっと批判的であってもいいと思うけど、なんでこんなに胡乱なんだろう。ノリで書いてないか。
 
昔話と日本人の心 (岩波現代文庫―学術)
河合 隼雄
岩波書店
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日本の昔話を心理学的に、特に女性像に注目して読んでいく。女性性の強い日本の昔話においては、女性の姿を追っていくだけでも、そこに働く根本の論理を概観する趣がある。ユングがとなえた「父・息子・霊・悪魔」の四位一体に対して、日本の「祖父・母・息子」に第四者の「無」を取りこみ、かつ柔軟にどれにもなり変われる意識を持たねばならないというのは、得がたい卓見である。精読必須。
 
迷宮学入門 (講談社現代新書)
和泉 雅人
講談社
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迷宮の概念を確認するために再読。迷宮が通過儀礼や死と再生などの神話的・多義的な意味を持つ古代以前から、都市の象徴となった古代ローマ、現世や聖地巡礼の象徴となったキリスト教……と変遷を辿っていく。迷宮とは違うけど双六とかも見てみたい。
 
高野聖 (角川文庫)
高野聖 (角川文庫)
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泉 鏡花
角川書店
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再読。「高野聖」では僧・薬売り・白痴の関係をちょっと考えた。中でも白痴の存在は鏡花と二重写しに見える。「眉かくしの霊」、やはり鏡花の作品では「水」を通すと一人が幾人にも乱反射するのだなぁと。宿の水は三条になって流れ、水を司る姫神は別の女に分裂し、ドッペルゲンガーも現れる。あと膝栗毛が読みたくなった。
 
遠野物語・山の人生 (岩波文庫)
柳田 国男
岩波書店
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鏡花の「山海評判記」を読むにあたって「遠野物語」だけ再読。七五「離森の長者屋敷にはこの数年前まで燐寸の軸木の工場ありたり」の節が好きだ。文学作品として端々の表現が目を引く。読み終わってうたた寝したら嫌な夢を見た。
 読むのにえらく体力を使った。前半は創作に近い随想と東西の比較文化論。後半は仏教的思弁というかなんというか、相当に仏教の哲理を感得していたのが見て取れる。近代化する日本の醜悪な姿を目の当たりにして一切皆空の仏教によりどころを求めたのではないかと思えるが。幼年時代の思い出を綴った「私の守護天使」には母性追慕の念もちらつく。顔のない幻影との遭遇。