8月第2週

フーコー その人その思想
ポール・ヴェーヌ
筑摩書房
売り上げランキング: 72847
コレージュ・ド・フランスの元同僚によるフーコー思想の手引き。ちと敷居は高いがフーコーのエッセンスを理解するにはもってこいの一冊だと思う。よくある誤解を解くことにも気を配っているので、その意味でも助けになる。あらゆる真理は存在せず、諸々の特異性のみがある。しいて言うなら、「真理はない」それだけが真理である。
 対話・講演集。権力と知の結託への検証と批判、かつそれを可能にしたディスクールに含まれる知をすら「厄介払い」したいということで、だから線的でなく瞬間的な爆発を起こす花火師でありたいらしい。主体へのまなざしがニーチェと同じなのかな。後半、近代医療の発生に関する二講演は溜息が出るほど鮮やかで興奮した。あとでもっかい読む。
 
ウェイクフィールド / ウェイクフィールドの妻
N・ホーソーン E・ベルティ
新潮社
売り上げランキング: 471985
ホーソーンウェイクフィールド」とそのスピンオフ作の合本。とはいえ実質的には後者がメインなんだろう。「ウェイクフィールド」は15ページ足らずの構造が強固な作品で、ボルヘスが激賞したというのも頷ける。これは古典的な趣がある。エドゥアルド・ベルティ「ウェイクフィールドの妻」は、正直蛇足としか言いようがない。抽象性が取り柄の元作品を、よくもまあ余計なものを付け加えて膨らませたなと唖然とした。「数分で語り尽くせる着想を五百ページに渡って展開するのは労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である」という言葉が頭をよぎる。
ちなみに「ウェイクフィールド」は春日武彦のお気に入り短篇のひとつ。
 定義しようとすると途端にステレオタイプに陥る「天才」という存在について、自由に語っている。タイトルが某書家をもじっていることからもわかるように、斜めに構えたいかがわしい一冊。中でも写真家と世界の構造の章がすごく面白かった。こういうのを楽しめるようになった自分もかなり染まってきたよなぁ。
 
フーコー入門 (ちくま新書)
中山 元
筑摩書房
売り上げランキング: 14525
ちくま学芸文庫のビジュアルブックに続く一冊として選んでみた。フーコーについてはじっくり取り組むつもりなので、こういう丁寧な入門書は本当に重宝する。既存の権力観をべりっと剥いでくれて素敵。

権力は外部から抑圧するものとして訪れるのではない。人々が社会の中で、他の人々と関係をもちながら、自己の欲望を追求するなかで発生する<場>のようなものなのである。

(8月17日追記)
再読。生権力の二重性、管理・福祉社会、真理のゲーム、パレーシアなど、後半を重点的に。絶対の真理を否定して個々の真理のゲームに参加すること。あやうく大事な部分を読み落とすところだった。二回読んでよかった。