料理

山に来て皮を剥いで帰ると
大きな床は血で濡れている
その上っ面に粗塩を撒いて
たくましさに一人うなずいたあと
脇のにおいが染みてきた古い
こめかみと目を念入りに洗っておく
今日こそ眠れると思ったのに
ゆっくり人を殺せると思ったのに
飛んでいった袋が帰ってこなくて
いらいらしながら骨を抜く骨を抜く
そして火の中に暮らした人を思い出し
そのまま沸いた湯へと殺到する
なにせ水車が回るほどの勢いで
ああ鮮やかな海老色のぴかぴか
海老色の沸いた湯のおののき
微笑んで腰溜めに構えて
包丁や近所の首のこと
持ち帰った網の行く末のことを
お目にかけてくれましょう
集めた石を崩れかけた箸に添え
静かに電源を入れて
静かに脅迫文を清書して
待って待って
待って
待ちくたびれてちょいと転寝
青白い顔して帰ってくる頃には
腹も冷えているだろうから
季節は冬であって
とても計画的な寒さである
水中の尻尾を劇的にひるがえして
金魚も身をよじるほどであった