探索行

 島に上陸してからの展開は早かった。打ち合わせの通りそれぞれ各所に散り、目当ての宝を探しにかかった。あるものは打ち棄てられた畑に、あるものは浄水施設に、あるものは神社に。自分は半壊した居住区に設けた拠点から、携帯で指示を出していた。月光が島のいびつなシルエットを浮かび上がらせ、どの応答からも波の音が遠く聞こえた。


 すぐに数時間が経過した。仕事を終えたメンバーが拠点に集結してくる。泥だらけのもいれば蜘蛛の巣にまみれたのもいる。各自が疲れきった様子で、そのくせ満足そうにぎらぎらと目を輝かせている。持ち帰ったものを地面に並べて検分すると、長いあいだ秘匿されていたとは思えないほどきれいな状態を保っていて、これなら容易く復元できるだろう。あとは最後の一人を待つだけとなった。


 そのとき、北の方角で鋭い悲鳴が響いた。一仕事終えてくつろいでいたメンバーはぎょっとして、一斉に指示役の自分へと視線を向けた。何も言うことはなかった。震える指で携帯のボタンを押す。コール音と、コール音と、そして、繋がった。かすかにうめき声と荒い呼吸が聞こえた。が、やがてそれも途絶えて、重苦しい死の沈黙が伝わってきた。


 そこにいる全員の顔に落胆の色が浮かんだ。あとは彼が到着すれば完成するはずだったのに。地面に並べられているのは両腕、両脚、胴体などのパーツで、頭部が足りない。かねてからの計画通り、欠損が出た場合は代用のものを用意しなければならない。そしてその一番の候補は、ほとんど危険を負うことのない指示役だった。自分は何も言わずに仰向きに寝転がった。


 メンバーの一人が形式的に確認を取り、太いナイフを首に押しあてた。無造作にぶつりぶつりと切られながら、新しい体に繋がれた自分は果たして誰になるのだろうか、と気になった。完全に切り離すためにごろんと横向きにされた。これから自分のものになるはずの各部が、蘇生を期待してぶるぶる震えているのが見えた。