千羽、他二篇

  千羽


 鶴を折ってくださいと頼まれたので折紙を机の上に束ねておいた。深夜、ふと目覚めて布団から顔を出すと、着物を着た女の子がせっせと紙を折っている。暗い中で折るのは大変だろうと手伝いを申し出たが、彼女はこちらをキッと睨みつけて、しなくていい、と一言云う。なのでそのままにしてみれば、赤や黄色、様々な色の鶴が千羽も折り上がり、紐を通して束ねられた。


 窓を開けると外は増水のため見渡す限り海のように見える。女の子は窓辺に立って、折り上がった千羽鶴を水に放り投げる。鶴は水中で燃えながら四方に散っていく。彼女はそれを見て満足げに微笑み、みずからも青白い炎に包まれる。



  エショウネシャウト


 エショウネシャウトのライブが行われるというので外に出た。すでに大勢のファンが縦横きれいに並んでチケットの販売を待っていて、先頭のほうはさまざまな武器を配られている。そして自分も含めたすべてのファンに武器が行き渡ると、いよいよ砂漠の行軍が開始され、じりじり照りつける陽射の下を進む。と見るや、突如現れた黒いスーツの一団の攻撃により、あたりは銃弾飛び交い死体が積み重なる壮絶な修羅場となってしまった。確実に数が減っていくファンのはるか頭上で、二機の戦闘機が交戦を始める。



  訓練


 一年後に殺し合いをさせられることになった。数十人のクラスメートと寝食をともにし、最終的には殺し合う。普段の戦闘訓練はつらいけれど、給食の時間だけは皆の緊張もほぐれて和やかな雰囲気になる。しかし今日に限っては仲間の一人が牛乳を飲んだ途端に血を吐いて死んでしまい、互いが互いを疑って牽制しあう事態になった。もうすでに血なまぐさい戦いは始まっていた。