水のように

菫を踏んで井戸に出て
むこうからこぼれる人を押さえる
押さえた腕が濡れてくると
泣いているんだ と気づく
いくつかの涙の粒が草にかよっていて
昼の庭でくるくると巻かれながら
湿った雲が頭をかすめていく
葉に浮き出た錆を流すように
水のようにゆらめいて
どこかへ去った響きがくりかえされる
巡る生滅のふちで
そのささやきを聞いて暮らす