2008-08-05 探幽記 詩 昼の熱が首に残り 薄もや漂う台所に下りていく 流しに秋刀魚が落ちていて しくしく泣いているので そんなに泣いても だめだよ 焼くよ、と断り 包丁の先導で 地獄を歩かせると 頭から尾までまったくの 美しい焼き魚になる それを仏間に運ぶ 待っていると 誰かが そっと襖を開け閉めする あなたはわたしの ご先祖さまですか 供えた花が枯れている 名前も明かさぬままに 秋刀魚の腹を 箸で探りはじめる