茅の先

茅の先から男が来る
まるで漂うように歩いてきて
魂がないのかとも思う
と目の前で立ち止まり
おまえか と問うので
そうだ と答えると
光るほど尖った釘を
喉に突き刺してくる
あまりの痛さに涙が出る
しかし喉を一突きされたので
悲鳴のひとつも上げられず
かひかひと息が漏れる
漏れた息が泡になって
顔のまわりにまといつく
何も見えずに首を揺らしていると
ごうっと強い風が吹いて
無数の茅の一本になり
どこまでも続く地平にむかって
静かに静かに囁くのだ
さやさや
さやさやと