3月第1週

西風のくれた鍵 (岩波少年文庫)

西風のくれた鍵 (岩波少年文庫)

人間と妖精が交錯する6篇のふしぎな物語。動物たちや窓の外の行商の声、巡る季節と自然、過ぎてしまった時間への愛惜……そういった浮かんでは消える小さな想念が妖精や魔法の姿を借りて現れているように思います。急ぎ足にではなく噛みしめて読みたい。
 
かぎのない箱―フィンランドのたのしいお話 (岩波おはなしの本 (5))

かぎのない箱―フィンランドのたのしいお話 (岩波おはなしの本 (5))

昔話のパターンをなぞる話が多くてそれほどフィンランドを感じさせるものではないかも。「どこでもない国へ行って、なんでもないものをつかまえてこい」と王様に命じられる『どこでもないなんでもない』がお気に入り。瀬田貞二と寺島龍一のコンビはいいですね。
 
ことばの色彩 (1978年) (岩波新書)

ことばの色彩 (1978年) (岩波新書)

エッセイと論考。散漫。
 
言語学とは何か (岩波新書)

言語学とは何か (岩波新書)

言語学の流れをざっと概観。あれやこれやの学派を経由して最後は言語の純粋性と系譜主義をしりぞけることになるのだけど、それぞれの学派に深く立ち入ることはせず、いわば結論のみで繋いでいくといった形なので、あまりわずらわしさを感じさせません。「私たちが言語の問題を考えるときに犯す最大の誤りは、それを、話す人間から取りはずして、それ自体を独立したものとして見ようとするたちばである」という視点はなにも言語学の枠の中だけではなく常に心に留めておきたいところ。その上で細かい部分にあたりたいですね。
 
ムーミン谷の彗星 (ムーミン童話全集 1)

ムーミン谷の彗星 (ムーミン童話全集 1)

再読。足場を確認する感じで。
 
日本語のレトリック―文章表現の技法 (岩波ジュニア新書)

日本語のレトリック―文章表現の技法 (岩波ジュニア新書)

1項目5ページ程度で30項目を取り上げる。あまり深くは踏みこみませんが実際に使うにはこれくらいのほうが直截でわかりやすいかもしれません。巻末の早見表もうれしいです。
 
馬と少年 (ナルニア国ものがたり (5))

馬と少年 (ナルニア国ものがたり (5))

うーん、昔読んでいるはずなのになぜか内容を覚えていなくて、今回再読してもやはりそれほど感興がわかなかった。自分がナルニアに求めているものとちょっと違う。これだと挿話の域を出ないかな。
 
海の王国

海の王国

エイキンによるロシアやバルカン諸国の昔話の再話。『しずくの首飾り』に続いてピアンコフスキーの繊細な挿絵がすばらしいです。エイキンに昔話を書くよう勧めたのがピアンコフスキーとのことですが、なるほど挿絵にマーブリングが採用されて物語とともに一層プリミティブな印象が強くなりました。
 
児童文学論

児童文学論

良くも悪くも古いなぁ。「時の試練を受けた作品」によって確立された評価軸を批評に用いるといった古典礼賛の傾向が強くて、そこからはみ出した判断の難しいものになると、しばしば「とにかく読め」的なごり押しになっている。もう少し融通のきく読みが必要なのではと思うけど50年近く前の論であることを考えるとしかたないのか。とはいえ、基本でありながら近すぎて見えにくくなっている優れた見識もいくつか散見されるし、一応概論としてアウトラインを作る手助けにはなった。