2月第4週

しずくの首飾り (岩波ものがたりの本)

しずくの首飾り (岩波ものがたりの本)

どこかマザーグースを思わせる奇想天外な短編集。影絵のような挿絵がきれいです。女の子におすすめ。
 
ことばとこころ (1976年) (岩波新書)

ことばとこころ (1976年) (岩波新書)

言語学に関する論考集。変形生成文法を知れたのはよかったものの、全体を通して統一的な像を結ぶことができなかった。一冊系統立ったものを読まないとだめだな。
 生物学者の手になる本書ではすべての話に動物が登場します。どの話もエスキモーの生活が透けて見え、中でも複数の話で言及されている『手ばたき山』が心に残りました。渡り鳥の旅の途中にあるこの山は、隣りあった二つの山が開閉するふしぎなところで、力のない弱い鳥は押し潰されてしまいます。ここを通り抜けることのできる鳥だけが生き残るのです。
 
銀のいす (ナルニア国ものがたり (4))

銀のいす (ナルニア国ものがたり (4))

ペシミスティックな泥足にがえもんがたまらない。彼の言葉によって、この物語が想像力と信仰の内的世界に支えられているのだということがしっかりと腑に落ちた。その豊穣さを証するような地の底の国ビスムの幻想的なイメージが美しい。
 
ポストガール〈3〉 (電撃文庫)

ポストガール〈3〉 (電撃文庫)

今巻ではシルキーはもうほとんどシステムの制限に戸惑うことがなくなり、器質的なことを除けば人間と変わりありません。そのためか正しく「ポストガール」として一歩引いて、周りの人に焦点が移ってきたかな。作者が「思い切りバットを振りました」と言えてそれに見合ったものが読めるのは素敵です。
 
ファンタジーの発想―心で読む5つの物語 (新潮選書)

ファンタジーの発想―心で読む5つの物語 (新潮選書)

ファンタジーには現実の規範を緩めて別の現実に身を置くことで生を見つめ直す役割がある。そして現実が内的世界の反映であることが了解されれば、現実の多重性・多層性からファンタジーを読み取ることができる。「午後のひととき、夜のひとときの一杯のマグカップがいくらでもふしぎな世界への通路になる」のです。
 
旅をする裸の眼 (講談社文庫)

旅をする裸の眼 (講談社文庫)

言葉がわからないまま異国の地をさまようベトナム人女性。その「裸の眼」で見た世界とスクリーンに映された映画が混じり合う。章ごとにカトリーヌ・ドヌーヴが出演した映画のタイトルを冠していて作中でも言及されるのだけど、数作を除いてほとんどが未見だったので、ちょうど主人公が言葉を理解せずにさまようのと同じような混乱を味わうことになった。「裸の眼」を実際に自分の目でも体験するというか。ただ最終章は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を見ておかないと本格的に理解が及ばないらしく、その点だけ残念に思った。
 
文化記号論 (講談社学術文庫)

文化記号論 (講談社学術文庫)

記号論の基礎、修辞、記号としての文化といった三つの領域がコンパクトにカバーされている。さすがに少し足早に過ぎるきらいはあるにしても、各章の終わりに要点と参考文献がまとめられているのでここからさらに詰めたり広げたりできそうです。あれはどうだっけ?と忘れた時の確認にも重宝しそうな。
 
ビッチマグネット

ビッチマグネット

初めての舞城作品。家族小説というか一人の人間がある「気づき」に達するまでのファクターのひとつに家族があるといった感じ。いろんな経験を通して家族のこともきちんと一個の人間として見られるようになった上でのあのフォントの大きさ(身近な他者の発見と驚き)なわけで、そういう視点を得たことで一人の作家が生まれたのだと考えました。作家が書いた作家、つまりセルフポートレートと取ることもできて、そうするとこの作者が覆面作家である事実が効いてくると思います。