追放

かかとの痛みで目を覚ます
起き上がって見ると 猫がかじりついている
しっしっと追い払う
そしてまた夢に戻る
 
夢の中でわたしは井戸のそばにいる
これから家に帰るところで
桶を抱えて立ちすくんでいる
早くしないと夜になる……
うだうだしているうちに
村の奥からどんどん人が出てきて
こっちを指差して見ている
あいつだよ あいつだ
わたしは泣きたい気持ちになる
わたしがいったい
なにをしたというのか
なんの罪があるというのか
土から水が湧くように
わきのあたりがじくじく湿ってきて
着物にまっ赤な血がにじむ
両方のわきから血が流れている
ほうらやっぱり あいつがやったんだ
ちがう
わたしではない
この夢はわたしのものではない
それでもたくさんの人に睨みつけられて
血を流しながら
ふらふらと外に出ていく
 
わたしではない
いろんな誤解があるのであって
かんたんに説明できるものではないのに
 
村から離れて
一人きり いや
猫が一匹ついてきた
相変わらずかかとにかじりついている
かじられて骨になった足が
ただただ寒かった