6月第3週
ブーム期の出版・映像の変遷から、現場の分析、口承文芸・民話研究の流れまで広くカバーした論考集。わかりやすいまとめとしては「個性尊重教育」と「制度に対する馴致」の矛盾の中で醸成されたものが「学校の怪談」であるとするが、そこは一筋縄ではいかず複雑。個人的には、学校という特殊な場にある小メディアとサブカルチャーや民俗学をも含んだ大メディアとの関わりを考えさせられた。ネットが普及した今ではコミュニケーションのあり方はどうなるだろうか。
続でようやくらしくなってきた。集中の白眉は「Les Invisibles 目に見えぬものたち」。全51篇の中に「花見川流異記」という詩群を書中の川のように含む詩集は、天沢作品における水のイメージと彼方への衝動の重なりを見事に示している。これは詩だけではなく童話にまで溢れ出る「水」を読み解く上で重要だろう。「雨は降り注ぎ川は流れる。作品は降り注ぎ物語は流れる。」と端的に表す解説も嬉しい。
クダンの話をしましょうか (MF文庫J)
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クダンの話をしましょうか〈2〉 (MF文庫J)
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