7月第2週
カシマさんとは手足のない幽霊である。カシマさんは噂を聞いた人のもとに現れ、適切に対処しなければ手足を取ったり取り殺したりする。本書ではネットに寄せられた情報をもとに、1972年を基点にカシマさんの噂を様々な角度から検証していく。鹿島神宮、踏切事故、日本兵、眷属の噂、チェーンレターなどを経て噂から日本の暗部が浮かび上がってくる様は読ませる。メディアに紹介された噂が中継地点を介してさらに広まったという「巣別れ伝播説」も魅力的だし、メタ的な仕掛けで不安が伝染するのも面白い。四谷怪談とかもそうだよなぁ。
消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ (ブルンヴァンの「都市伝説」コレクション)
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ただし身体性への惑溺には注意を払わなければならない。身体、そして感覚の称揚は、行き過ぎれば動物の次元に堕してしまう。
古代から現代までの言霊思想の変遷を辿る。わりと列挙の感があるのでざっと読んだ。言葉は事柄・事物と一体のものであるという「言事融即」が言霊思想の根底にあると説く。この観念から名前のタブー(諱)なども発生してくる。「大祓詞」とか祝詞をちょっと見てみたくなった。
恐るべき因果を抱えた女系一族のおよそ百年に渡る地獄巡りの物語。狂い死にした娘に代わって分限者の家に迎えられた乞食の娘「シヲ」を中心に明治から平成へと系譜を辿っていく。死者の影を背負い死者と交わって子を成すことで続く血と妄執の連なりは、一族に分かちがたく組み込まれた業の凄まじさを強く感じさせる。さらに、シヲの前身に四国遍路があることからも窺えるように、この一族の系譜はひとつの魂鎮めであるのかもしれない。「因果は滅びず廻る」。自分の背後にも多かれ少なかれ業と因果があり、地獄巡りの途にいるのだということを思う。
南の子供が夜いくところ
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近世の流行神 (1971年) (日本人の行動と思想〈17〉)
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宮田 登
評論社
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のち『江戸のはやり神』と改題。
おお、猿渡が作家になってる。伯爵もほんの少しだけ登場するけど、前と違って幻想味が強まっているので別作品と考えたほうがいいな。どの短篇も語りの巧みさと語りから語りへのスイッチの鮮やかさで魅せる。中でも、食にまつわる奇妙な世間話「フルーツ白玉」、幻のウクレレを巡る悪魔的な奇譚「甘い風」が印象に残った。どちらも締めの洒落っ気がいい。「新京異聞」みたいなこてこての幻想譚もよかったけど、個人的には酒の席で話されるような不思議で俗っぽい雰囲気のものに軍配が上がる。