9月第1週

エッセイ脳―800字から始まる文章読本
岸本 葉子
中央公論新社
売り上げランキング: 89128
いかにも職業エッセイスト的でシステマティックな書き方本。テーマから題材を決め、それを「転」に据えた上で残りの「起承結」を整える。そしてエッセイを成り立たせる文章を枠組・描写・セリフの三つに分類し、読み手の意識を考慮しながら文単位で構成していく。視点とか語感とかのこまごましたテクニックにもざっと触れられている。ただ、こういった起承転結の立て方だと少なからずパターンに陥ると思うのだけど、そこをどう解決しているのかは気になった。
 
Drawing the Living Figure
Drawing the Living Figure
posted with amazlet at 10.09.05
Joseph Sheppard
Dover Publications
売り上げランキング: 75
最近またちょこちょこ絵を描きはじめたのでひさしぶりに全模写した。人物デッサンの横に骨格図と筋肉図が並んでいる。ポーズは立ち・座り・膝立ち・しゃがみ・寝・ひねりのチャプターに分かれ、それぞれ男女の前後と側面からの姿が一通り。人体の理解のお供に。
 
パラダイス・モーテル (海外文学セレクション)
エリック マコーマック
東京創元社
売り上げランキング: 538921
再読。三回目にしてようやく把握できたという実感がある。四人のマッケンジーの体には本当は何が埋め込まれたのか、それがどういうものに成長し波及したのか? この小説は一貫して「物語でしかない生をめぐる物語」なのだけど、グロテスクな物語をその身に抱えた人々の姿が、空虚な感触とともに儚さを感じさせて胸に迫る。「自分を愛するものの手が、同時に自分を殺すものの手でもあると知ることは、もしかすると慰めではないだろうか?」。友であるからこそドナルド・クロマティは最後の場面に現れたのだ。
 
日本語の作文技術 (朝日文庫)
本多 勝一
朝日新聞社出版局
売り上げランキング: 377
ざっと一読。文章読本が主に心得を説くものであるのに対して、この本は経験に導き出された実際的な作文技術に的を絞っている。特に修飾の順序と、句読点の打ち方については非常に参考になった。ただ、この本のみの理解では危うい気がする(著者のイデオロギーが全開なところがある)ので、ここを基礎のひとつにしながらも他の本を参照して文章への感度を高めていきたい。何度か読むことになりそうです。とりあえず次は要点を抜き出す感じで。
 『怪談』の作者として有名なラフカディオ・ハーンの足跡を辿る。なにかいい入門書はないかと手に取ってみて大正解だった。きめ細かな愛情をもって日本に接したハーンと同じように愛にあふれていて、ハーンの魅力的な人柄が十分に伝わってくる。随筆・紀行文まで含めてハーンという人を包括的に見ることの価値に気付かされた。
 新古今集の入門にはもってこいの本。前半は新古今の歌の特徴を見て、後半は定家や西行など歌人をひとりずつクローズアップしていく。過去の歌や物語を踏まえた観念的な歌風、無内容性、歌合、歌枕、本歌取りの思想。そういったポイントをつかんでおけばこれは一生楽しめそうだ。定家の「詞は古きを慕ひ、心は新しきを求め」には深く頷く。著者は定家の小難しい歌は好みではないようだけど、あれはあれで読み解くうちに心象の襞に分け入るようでいいと思うんですけどね。
 再読。春から秋までのムーミン一家のエピソード。で、これは「所有」についての物語なんだよなぁ。所有するのは具体的なモノであったり出来事であったり、さらには互いの存在だったりする。たとえばスナフキンは何も持たず誰のものにもならないし、ヘムレンさんは常に何かを集めている。あのニョロニョロでさえも。しかしその中にあってムーミンママの存在は桁外れに大きい。物語の最初から最後まで肝心なところはきっちりママがまとめている。

なんだか、ねずみがあなぐらにもぐったようよ。スニフ、おっかけていって、ミルクをすこしおやり。