10月第1週
写真と資料で見る鏡花評伝。まあ奥様がきれいだとか先生ちょっと線が細すぎるとかミーハーな興味に応えてくれる写真集です。ゆかりの人や場所、原稿や初版本の写真も充実してる。火鉢の前で兎の玩具を手にしてほっこりしている先生の姿が素敵である。
いろはの徳はむりやうなり。つかふときは、たいせつに。
「無憂樹」:ある職人が妻の形見として細工した香合をめぐる物語。変に被虐的でやりきれない話だが、クライマックスの月下墓前の法廷という趣向の異様さは特筆に値する。それと女が苦界に身を沈めて不幸な目にあうというのは鏡花的にぐっとくるシチュエーションなのか。気持ちはわかる。
「お弁当三人前」:幼年期の終わりに際しての幸福なひと時。小品。
「春昼・春昼後刻」:春昼の暗さは言わずもがな。今回はひさしぶりに後刻を読んで、そのうららかな狂気の中に流れる切なさに身悶えした。年々この後刻の存在感が増してくる。
再読だが後半は覚えがないのでたぶん途中で止まっていたんだろう。鏡花のいくつかの作品と同じく逗子が舞台で、モチーフも他作品に通じているものが多く興味深かった。どこか呑気な肝試しの雰囲気がありながらも最後はしっかり彼岸に突き抜けるのはさすが。
小泉八雲作品集〈1〉日本の印象 (1977年)
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音楽の落とし物―そして…その落とし物 (1980年)
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