11月第2週
森鴎外集 鼠坂―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)
posted with amazlet at 10.11.14
書評集。しっかりと自分を持った上で軽やかに文学に遊ぶ姿勢が好ましい。いくつかの評では倉橋さんの作品がフラッシュバックすることもあって微笑ましく思った。吉田健一がほんとに好きだったんですね。
近代日本文学史ですね。文章の読み書きがメインではなく明治から今日にいたるまでの口語文の歩みを整理するのが目的。鴎外・漱石に加えて露伴もすごいというのを今更ながら知った。それと荷風と谷崎は一度真剣に読まないとな。
ブックガイドであるとともに深層心理学の考え方を紹介するもので、深層心理学から見ればこういう解釈ができますよ、こういう風に考えて生きていくと楽ですよ、と砕けた調子で教えてくれる。たとえば「自我はエス(無意識)の侵入を受けて」を噛み砕いて言うと「私は"それ"にやられましてんわ」になるらしい。なんというか僕の中で河合先生は神妙に話を聞くべき人の一人になりつつある。
ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論 (文春文庫)
posted with amazlet at 10.11.14
真に見るということは、自分自身を見ることによって、自己と他者の関わりを見ようとすることにあるので、その観点を失ったままで、他者と他者の関係を見ようと思っても、見たつもりで何も見てないことにしかならないのではないか。
雑に読んでしまったのでちょうど戒めになる文章を引用しておく。きちんと自己に引きつけて読書しなければ。
南方熊楠―森羅万象を見つめた少年 (岩波ジュニア新書)
posted with amazlet at 10.11.14
エッセイは何に反応してどう書くのかがポイントだと思う。本書の場合、著者は自分が感じる現実との齟齬を基本に据え、疎外感や現実の破れ目の物事を主に書いている。これは定型・非定型や破調と言ってしまえばいかにも歌人の特徴なのかもしれない。ただ、そういった破れ目の物事は必然的に(秩序に対する)脅威をともなっているもので、語り口はおもしろおかしいとしても、破れ目に落ちこんだ人生の恐ろしさを見せられるようで怖かった。少なくとも私は笑って流せない。
最近いちばんこわかったのは、携帯電話の留守録音に入っていたメッセージである。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああとその人は云っていた。