11月第3週

入門書のつもりで読んだら思いのほか話題が専門的で困った。常識となった考え方を再三検討して常に批判的であり続ける、という著者の姿勢が印象に残る。まだまだ途上の分野ということで期待が高まります。
 
イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272)
石城 謙吉
岩波書店
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北海道で見られる赤・白の斑点を持つ二種のイワナに焦点を当て、その種間関係の実態を明らかにしていく。イワナとヤマメの区別もつかない人間にしてみれば、「河川形態」「すみわけ」などの生態学の理論を交えた解説は新鮮で面白かった。著者の叙情的な語り口もいいし、自然の中で人知れず生のドラマが繰り広げられていることが意識されて、不思議に感動する。
 尾瀬開拓から現代までの三代九十余年の記録。これこそまさに「山に埋もれたる人生」といった感じで、初代・長蔵の姿にはこの時代多くいたであろう無名の人々の一類型を見るようだった。で、少し気になったのが現地の人の意識。あれだけ環境保護が叫ばれているところだから開発反対一色だと思いこんでたんだけど、実は生活を維持するために開発を必要としている面もある。一筋縄ではいかないな。
 
日本語練習帳 (岩波新書)
大野 晋
岩波書店
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「は」と「が」の違い。それと「のである」「のだ」が押し付けがましいというのは言われてみればそうだよねと。敬語に関しては気長に勉強していきたい。
 
小説のストラテジー
小説のストラテジー
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佐藤 亜紀
青土社
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あまりにしんどいのでところどころ読み飛ばしてしまった。小説は記述の運動によって快楽をもたらす「快楽の装置」であり、読者は読むことを通じて作品を意味付ける。それはバフチン流の多声的な形態として現れる……ということなのかな。とりあえずこの理解だと読むことと書くことが接続されるので心強くはある(そこまで単純ではないですが)。しかし論を追うのがやっとなのにナチュラルに挑発されたりして難儀だった。作品をあくまでも虚構にとどめる姿勢は好きなのだけど。