12月第2週
アフォリズムあり天声人語風の随筆あり、短い章立てでさくさく読める。読書の合間にでもページをめくってそのたびにお気に入りの記述が見つけられそうです。
自信のないことを自覚している演芸ほど見ていて苦しいものはない。しかし、そうかと言って、自信するだけの客観的内容のないただ主観的なだけの自信をふり回す芸も困ることはもちろんである。至芸となると、演技者の自信が演技者を抜け出して観客の中へ乗り移ってしまう。
前半はごり押しで読書を勧めるようなところがあって少ししらける。が、それでもとにかく本が好きなんだという気持ちに巻かれて結局は楽しく読んだ。これを読んで「腕前」が上がるかは微妙だけど、愛が伝わって元気にはなる。個人的には「こうなってはいけないな」とも思いつつ。
エッセイ風の怪談集。日常生活で遭遇した怪異を綴っている。あっさりした巧い語り口で、怖さも下品になりすぎない程度のちょうどいい匙加減。肩の力を抜いて楽しく怖がることができた。「夢の出口」「三島の首」の並びがお気に入り。
奇妙な情熱にかられて ―ミニチュア、境界線、贋物、蒐集 (集英社新書)
posted with amazlet at 10.12.12
茫漠たる世界を受け止めるにあたって、人間は自分なりにやりやすい形に世界をカスタマイズする。それがミニチュアにリサイズすること、境界線を引くこと、オリジナルの模倣、そして蒐集である。はたから見れば奇妙にも映る行為や物事が世界にたしかな手応え(=リアリティ)を与える、すなわち「時間を言葉で秩序づける」。
軽めの紀行エッセイ。日本を出れば世界は結構いい加減で、変に凝り固まっていてはやってられないし、それでは自分の国のことにも気づけない。ゆえに旅にも日常にも相対的に見る視点が必要だそうな。暑くてうるさくて眠れないのはやだな。