12月第1週

友人重病の報を受け、ヘルツォークミュンヘン-パリ間を徒歩で移動する。「もしこれが本当に無意味なことなら、むしろ最後までその無意味さを味わいたい」との言葉通り、友人のためというのは建前でしかない。風雨と雪の中をひたすらに歩き通して動物的ともいえるある状態に達すること。巡礼とはこのような行為を指すのだろう。道中の思考をそのまま書き留めた文章に朦朧とする。
 性の解放であったり豊作祈願であったり、祭りは活力を呼びこむための知恵である。現代の価値観から外れた"奇祭"ならなおさら。そう考えると、適当な理由をでっちあげての健康的な狂いっぷりが、むしろ誇らしくさえ思えてくる。とはいえわけのわからない祭りはあるもので、キリスト祭りや夜中になめくじを見守る祭りなんてのには唸ってしまった。
 
六郷満山物語―国東半島紀行
中谷 都志郎
大分合同新聞社
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六郷満山の地・国東半島の寺院を紹介する写真集(著者は「誘いの手引書」と書いているが)。山岳信仰と結びついた特異な石造文化があり、半島のほぼ全域に法灯が広がっている。写真で見てあらためて興味をかき立てられた。
 
お伽噺桜―大沼英樹写真集
大沼 英樹
窓社
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畑仕事をする老人や遠足風景、はしゃぐ子どもたちや花見客など、営まれる生活のほうにウェイトが置かれている。田舎の人間にしてみればわりとありふれた風景だが、だからこそ親しみやすく、くり返される生の手応えがはっきり感じられる。雅な桜もいいがこういう土の匂いがする桜もいい。
 
東京に暮す―1928~1936 (岩波文庫)
キャサリン・サンソム
岩波書店
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ずいぶんと贔屓目に書いてくれてる。がつがつと精神性を論じるわけではなく、この時代あったはずの不穏さも控えめで、一般的なものへの観察に徹している。このほうが等身大でいいのかもしれない。「最も日本的な光景の一つは、風呂上りの観光客が、夜風にあたって湯冷めしないように厚手のどてらを羽織って辺りを散歩している姿です」、さりげない一文が楽しい。
 
大人の友情 (朝日文庫 か 23-8)
河合 隼雄
朝日新聞社
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互いに死すべき者としての自覚を持ち、やさしさをもって交わる……人生にも友情にも何が起こるかわからないが死だけは確実とは凄みのある知見。ここまで来るともはや友情の範囲を超えて人生観のようなものになってくる気がする。