5月第4週
えらく読みにくいので大雑把に読了。この分野は邪馬台国問題と同じではまりこめば面白いのだろうが……。問題そのものより、幻想を主張しているとしか思えない学者の態度や政治利用のほうが気になった。
温泉のトポスをめぐるエッセイあるいは紀行文。いつもながら食や性や怪奇といった下世話になりがちなネタに文学的興趣を乗せて描くのが上手い。人間の本源にある欲求と温泉地のノスタルジーが心地よく融け合っている。
「内面と他者の媒体としての顔」について、わりと気ままな語り口で進められる。顔なぞ頭部の皮膚でしかないとわかっていても、そこに物語を見てしまう人間の心を含め、顔を語ることにはある種のいかがわしさが付きまとう。キッチュな図版やエピソードが豊富な本だった。