6月第1週
柳田国男の読み方―もうひとつの民俗学は可能か (ちくま新書 (007))
posted with amazlet at 11.06.05
絵はミヒャエル・ゾーヴァ。頭のてっぺんから火が出とる。
ひとりの人間と、その人の自我との関係は、もっともごまかしのきかない関係である。
砂漠もまた砂漠のもくろみを持っている。
アルコール依存症、統合失調症、摂食障害など、九つの症例を紹介する。これは良かった。それぞれの臨床例が余計な私見を交えずに提示され、それでいて説得力を失わない程度に整えられている。裁判員制度を意識している節もあり、鬱病への国家的な取り組みをうながす点も好印象。精神疾患の知識がない自分にはとても勉強になった。この人の本は他にも読んでみる。
ふとしたときに人を犯罪や愚行に向かわせる「悪魔のささやき」について。社会の刑務所化による影響(プリゾニゼーション)で、元々流されやすい性向を持つ日本人はことさらに悪魔のささやきに流されやすくなっている、ということらしい。うーん、どうにも話が抽象的で、対処法が「時には間違うこともあるからそうならないように気をしっかり持とう」では使えるのやら使えないのやら。単に姿勢を見直す意味ではいいと思う。
第一章、自殺死体がどうなるかはなかなか興味深かった。飛び降り自殺で体内が破壊され、骨の重みで辺縁性出血が生じるというのは、思ったよりも人間の体は水っぽいんだなと得心がいった。ただ監察医の知見はいいのだが、とにかく自殺はいけない式の単純な倫理観と、退役軍人さながらのアピールには少々鼻白む。淡々と書いてくれればよかった。
「必要な部分だけを梅干し大に切り」みたいなレトリックがいかにも現場の人という感じで面白い。
とにかく明るい写真集。もうちょっとレトロ路線も見たかった。イタリアの古い町並みが素敵だ。
単行本にて再読。
それと上記のほかに、全国水土里ネット『疏水のある風景』2009年写真コンテストの冊子。これは普通に流通してないみたい。写真も素敵だけど、「風連東乙支線用水路分水枡」「猫谷地疏水」「江戸川水系緒絶川」など疎水の名前がイカス。
http://www.inakajin.or.jp/sosui/event/0911gallery.html
http://www.inakajin.or.jp/sosui/event/0911gallery-all.html