11月第2週
ボルヘス怪奇譚集 (晶文社クラシックス)
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お気に入りは「城」「ふたりの王とふたつの迷宮の物語」「宝物」「偏在者1・2」「学問の厳密さ」「不眠症」。それと訳者あとがきの「本書におさめられていない話の探索のために宇宙という図書館をいまいちど訪れてもよいだろう」
こうして彼が大きな城の前にやってくると、その正面にはこういう文句が刻まれていた。わたしは誰のものでもなく、誰のものでもある。はいる前に、おまえはすでにここにいた。ここを去るとき、おまえはここに残るであろう。
「城」 ディドロ『宿命論者ジャック』(1773)より
アトラス―迷宮のボルヘス (^Etre・エートル叢書)
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ピラミッドから三、四百メートルほど離れた場所で、わたしは屈みこんで一握りの砂をつかんだ。少しばかり遠くに移動して静かにそれをこぼし、小声で呟いた。『わたしはサハラ砂漠の姿を変えようとしている』。(…)これを口にするために自分の全生涯は必要とされたのだ、とわたしは思った。
雨の午後の降霊会 (創元推理文庫)
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霊媒師としての名声を得るために誘拐を企てた夫婦。しかし思わぬ手違いが生じて…。これは半分あたりまでどうにも退屈だったけど、後半急に物語が動き出して楽しめた。身代金の受け渡しがうまくいくのかとか犯行が露見しそうとか、そういったごくストレートなサスペンスの面白さに加え、計画がずさんなせいでドタバタしてるのもわりとおかしい。幻想小説のようなタイトルだが幻想味は少なめ(ないことはない)。あとなんか映画っぽいなと思ったら実際に映画化されているらしい。
とある貴族屋敷に逗留した画家と学者の二人は、住人の不可解な様子に奇異の念を抱く。どうやらそれは三十年前に死んだ令嬢に関係しているらしいが…。エリアーデの処女幻想小説とのことで、ルーマニアの吸血鬼伝説を下敷きにした幽霊譚である。夢の中をさまようような感覚が終始つきまとい、登場人物たちが怪異に翻弄される様はもどかしさを感じさせる。加えて幽霊側も妙にせこいというか、帯のあらすじに書いてあるような派手な話を期待すると肩透かしを食うかもしれない。むしろ恋物語と考えたほうがいいのかも。よくできてるんだけどね。
不思議の国のアリス (世界文学の玉手箱)
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