11月第3週

詩がテーマの講演録。ボルヘスは自身を快楽主義の読書家と言っていたが、それは詩に対しても、ひたすらに美を求める姿勢として現れている。隠喩によって言葉の向こうに永遠の美を暗示する…暗示することしかできないという断念は、詩だけにとどまらずボルヘスの基本的なスタンスだろう。
 
サロメ誕生―フローベール/ワイルド
工藤 庸子
新書館
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フローベール『ヘロディア』、オスカー・ワイルドサロメ』(両作品ともサロメのバリエーション)と論考を収録。十九世紀ヨーロッパ、脱宗教化運動によって、宗教を遠ざけるというよりむしろ冷静・科学的に宗教を捉える姿勢が生まれ、国民のアイデンティティを証する身近な宗教幻想、つまり聖書へと注目が集まった。その流れの中でオリエンタリズムとも合流し、サロメは一大ジャンルとして隆盛を誇ったという。ざっと目を通したけどサロメ自体は思ったより面白くなかったな…。
 
はじめて読むフーコー (新書y)
中山 元
洋泉社
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第一章はディディエ・エリボン『ミシェル・フーコー伝』のダイジェスト。第二章からは狂気・真理・権力・主体の四つのテーマでフーコーを紹介する。制度の究明と、制度へのアクションとしての美学的な生、ということでまとめるとクリアに把握できる。自己への配慮・道徳によってなされる率直な物言い(パレーシア)……後期フーコーが鮮やかに示されていておすすめ。