3月第4週

ゴーレム
ゴーレム
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グスタフ マイリンク
河出書房新社
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ゴーレムが現れるというゲットー(ユダヤ人街)を舞台に、記憶を失った主人公ペルナートは、街の様々な人々に関わることで己を発見していく。ゴーレム伝説、入り口のない部屋、酒場、タロットカード、夢、カバラ…などなど、ユダヤの秘教的な雰囲気に幻惑させられる。が、どうにも盛り上がらない展開に焦れに焦れた。格段描写がいいわけでも人物が面白いわけでもなく、ではボルヘスが愛読した本書の魅力とは何だろうと思っていたら、最後の最後に物語を壊しかねない結末が待っていた。これには唖然。幻想小説はこういうことするから油断ならない。
 怪異を引き立てる日常描写に見るべきところあり。たとえば病院にまつわる話で「病室は鍵がかからないからゴッドファーザーの一場面を思い出す」とか、怪異とは直接関係ない部分がとても効いてる。生活のついでに怪談、みたいな軽やかさで、別世界が身近に感じられて楽しい。
 17世紀英国、のちに「奇書」とまで言われる日記を残した人物がいた。その名もサミュエル・ピープス、種族・おっさん。およそ10年にも渡る日記の中には、浮気や賄賂、ペストに大火に国家の危機と、しがない官僚生活を彩る激動のあれやこれやが書き連ねられている。時に金策に駆け回り、時におべっかを使い、まことに情けなくもどこか憎めない生き様は、人間の真の姿を克明に映し出している(?)。当時の世相を生き生きと伝えつつその突き抜けた俗物っぷりに爆笑必至の一冊。
 
レンブラント (アート・ライブラリー)
マイケル キツソン
西村書店
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(読んだのは旧版)
「テュルプ博士の解剖学講義」は肖像画としての性格が強く、画中の人物の一人が手にした紙片に、描かれた人物の名前が記されている。衝撃的だったのは「デイマン博士の解剖学講義」の存在で、こちらは頭部の解剖を描いているのだけど、解剖学者の首が画面の上端で切れている、つまり頭部のない人物が死体の頭を解剖するという恐ろしい構図になっていた。絵が破損したためこのような形になったらしい。
 旅の行程(内容も)が環を描いているからこのタイトルなのだ、と思い至る。
 
ふるさと玩具(おもちゃ)図鑑
井上 重義
平凡社
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紙上連載をまとめたもの。スクラップしていたのですが本になったので読んでみました。廃絶が多い中、こういった形で残してもらえるのは嬉しいです。