4月第1週
「潟」「進歩の前哨基地」「闇の奥」「エイミー・フォスター」を収録。見知った環境とは隔たった別の環境へと投じられた人間の孤独、その孤独な想像力によって試練を受ける人間の姿が描かれている。わけても凄いのが「闇の奥」で、単に植民地を描いたものとしても、また心の闇の奥に踏み込んだものとしても稀有な作品だと思う。クルツの言う「地獄」とはもちろんアフリカのことだけを言うのではなく、この世界への真実の呪詛であり、だからラストのマーロウの嘘は(優しさであれ)真実から目を逸らしたことになる。闇は直視できないほど暗いのだ。
……そうだ、不可能だよ。たとえば人間存在のある一時期の生命感だね――これこそ人間生存の真実であり、意義であり、――そしてまた霊妙神秘なその本質だと思うんだが、――さて、それを他人に伝えるということになると、ついに不可能なんじゃないかねえ。不可能だよ。われわれの生も、夢と同じだ、――孤独なんだよ……
「エッダ」「グレティルのサガ」「哀れなハインリヒ」「アーサーの死(抄)」「ローランの歌」「狐物語」を収録。「アーサー」はなんとか筋がわかる程度の抄訳なので注意。エッダとサガへの興味は増したが他はうーんという感じだった。騎士道の理想化が寒い。
アイスランドの巻。サガとエッダしか知らなかったので、「山姥を殺してその後は末永く暮らしました」式の普通の昔話があるとは思わなかった。ディテールにややアイスランドっぽさがある。