6月第2週
再読。新聞の片隅に見つけた死亡記事をきっかけに、主人公は数千億の金が動く闇金融の世界へ、そして永久機関や殺人、チョコレート・ケーキやかみのけ座の立ち現れる迷宮へと落ち込んでいく。全体像をはっきりと確定できない構成になっていて、物語を追いながらも物語に蝕まれていく感覚がつきまとい、また、「アムネジア(記憶喪失)」とタイトルにある通り、失われた記憶とは何だったのか、果たしてそれは本当に存在したのかと不安を煽られながら、終幕に至ってはなぜか不思議な安心を感じさせる。おそらく何度読んでも幻惑されるのだろう。
再読。見世物小屋「カメラ・オブスキュラ」に映し出された水族館には、本来ならそこにあるはずのない地下への階段が存在した。こっくりさんの予言、霊界ラジオ、邪教の影、金星人と、平和だった日常は徐々に狂気に侵食されていく。10代という最も曖昧な時期に世界の不確かさに触れ、信じていた足場が崩壊する恐怖。それは容易に人を狂気へ、死へと導き、後戻りのできない地点に置き去りにする。青春ホラーというにはあまりに苦い一冊。
再読。魔女は当初さほど脅威とされなかったが、「世界政府」であるところのカトリック教会の動揺とともに、教会の権威を正当化する形で異端と位置づけられ迫害されていく…という説は現在では修正を迫られているようだが、それはともかく、本書で紹介されている罪を着せられた人が書いた家族への手紙には、他の何にも代えがたい価値がある。初めて買った岩波新書ということもあって個人的に思い出深い。
魔女幻想―呪術から読み解くヨーロッパ (中公新書)
posted with amazlet at 12.06.10
プロテスタントの考え方が面白い。突然の死や疫病といった不幸ですら全能の神の御業である。魔女はただ悪魔にたぶらかされて自分に超能力があると考えているだけに過ぎない。よって魔女を焼く必要はない(とはいえ魔女が悪魔にたぶらかされていること自体が罪だと考える立場もある。)