8月第4週

神事が芸能へ、あるいは神々が落魄して芸能の場に現れるというような民俗学の論理にはさして興味がないが、能と狂言の違いに関してはたいへんためになった。能はシテ一人主義であり、すべてを内面化した劇空間を現出せしめるものであるなら、狂言は対話劇で、主客がはっきりした現実の空間である。

同じことがらを当事者の立場でみるか、第三者の立場でみるかによって、能になったり狂言になったりするのである。

「梟山伏」に見られる徹底的なナンセンス、社会や常識をまったく相手にしない底抜けのナンセンスの恐ろしさについては覚えておきたい。
 

狂言・鬼山伏狂言・出家座頭狂言・集狂言を収める。山伏が登場する狂言泉鏡花の作品に使われていることもあって馴染みを感じた。また、「月見座頭」は座頭と男が打ち揃って月見をする狂言で、二人で楽しい一時を過ごした後、座頭の目が見えぬことを幸いに、男が別人のふりで座頭に喧嘩を仕掛ける。人情の脆さを見せられるような結末に慄然とした。
 広くカバーした入門書。写真が豊富で行き届いてる。いい本です。
 
十五少年漂流記の島―ニュージーランド紀行
塩野 米松
求龍堂
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ニュージーランドに関する本が図書館にこれくらいしかなかった。よくあるゆるふわエッセイ。一瞬で読める。