anthology

霧のたちこめる暗闇に
ただ涯てしなく絶壁が聳え
かつて上を目指すものはなく
落ちる礫さえひとつもない


その中腹に穴があり
洞から漏れる光があり
何者かアモルフの影が
浮かれ踊る影法師が
空もなく地もない闇へ
たらたらと溢れ出るばかり


 わたしはそれを戦前の
 古いanthologyの中に
 薄墨色の挿絵として
 いかにもありありと見た