岩団扇

大雨で水びたしになった藪の
玄関と云おうか山門と云おうか
とにかく入り口のようになっている
そのべっとり朱色の鳥居をくぐり
急な石段を登ってゆく


ざぶざぶと流れる水が脛に冷たく
苔に滑ってずり落ちそうになるのを必死に
踏み堪えて上を見上げてみれば
行商人風のターバンが降りてきて
この上にはナチラナトラしかありませんよ、と云う
ああそれです、それこそが×××の棲処なんだ、と
わたしの言葉を聞いているのかいないのか
なんとなく鼻白んだ様子で降りていくのを見て
さて鼻白むのはどっちやら


それでも木の枝にしがみついて辿り着き
やっとのことで入城手続きを済ませてから
土産物屋の軒先で一息
団扇など扇いでいるところなのです


http://web.hakuba.ne.jp/potatoes/botanic/iwauchiwa.html