はじめに 三

 嘘を取り混ぜて日記を書いていくというのは決まった。だが当然、嘘しか書かないとなれば別のつらさが出てくるので、そこはバランスを取って書いていきたい。このバランス感覚を習得するまでは妙なことを書くかもしれず、文章の拙劣さや論理の不分明とともに、合わせてご容赦願いたい。
 再度、泉鏡花の言葉を引く。

 次ぎに日記を書くに就て先づ第一に注意せねばならぬことは、その日の出来事を順序正しく、而かも細かく記すことである。その間に飾りや、嘘があつてはならぬ。日記にはそれが禁物だ。
 それから、外面の出来事ばかりでなく、内部の生活、即ち、思つたこと、考へたこと、感じたこと──思想生活をありのままに記して書くことも必要である。

 はっきりと嘘を書くなとあるが、前述したとおり、自分の心情を書くためには嘘をつくのもやぶさかではない。鏡花の同じ談話に「唯真情を吐露せよ」とあるのを都合よく解釈させてもらうことにして、文章の上では嘘かもしれないが内容的にはできるだけ本当のことを書いていきたい。もしこれが崩れるようなことがあればただ書いている人間の技量が及ばぬだけである。
 三日坊主対策について。なぜ日記は三日しか続かないのか? もうすでにこの文章と前の文章の間に断絶があるのだけど、毎日書こうなどという正気の沙汰ではないことをやろうとするから日記は途絶えるのであって、気負わず無理をせず、書きたくないときはすっぱりと書かないのが得策だといえる。
 だからといって本当に書かないのでは元も子もないので、なるべく書くのが楽な方法を取る。日記にフォーマットを定めること。中断が許されない業務日誌などでは書くべきことがあらかた決まっており、決まった記入欄をひとつひとつ埋めたり、そこに収まらなければ備考欄に書き留めるといった形式になっている。それと同じように書くべきことを峻別してフォーマットを作っていけばその日書く内容も自ずと決まってこよう。
 三回に分けてこんな前書きをくだくだと書いてきたのは、書きながらまず大前提のフォーマットを定めていく目的もあった。具体的にはどんな形を取るのか、小説形式にするのか、人称や視点をどうするか、そういった部分は今後書きながら試して詰めていこうと思う。フォーマットがスタイルに発展することを期待したい。
 また、読むのが面倒な人のためになるべくスターコメント欄に要約を書くことにする。いちいちおまえの書いたもんなんか読んでらんねーよという人はご利用ください。/追記:スターコメントは普通見られないそうなので使うのやめます。
 と、そんなわけでゆるく書いていきますので、よろしくお願いします。