4月第4週

光車よ、まわれ! (fukkan.com)

光車よ、まわれ! (fukkan.com)

お、おもしろかった。露骨に夢に題材をとった物語でそのイメージの奔流だけでもぐいぐい読ませるし、なにより日常と非日常の清々しいまでに暴力的な切り替わりに驚かされる。なんの溜めも説明もないのがまたすばらしい。しかも日常といえる場面ですら不吉なイメージ(たとえば狂い咲きのタンポポや血)があちこちに散りばめられていて、読み終えた頃にはまるで目に焼きつけられたように感じた。世界が不吉に見えるようになるというか、いつまでも後を引く読書体験だった。
 
夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)

夜叉ヶ池・天守物語 (岩波文庫)

再読。白雪姫の口上は何度読んでもいいですね。
 
王女とゴブリン (母と子の図書室 マクドナルド童話全集 1)

王女とゴブリン (母と子の図書室 マクドナルド童話全集 1)

少年と少女が魔法の助けを得てゴブリンと戦う話なんだけど、塔のてっぺんから鉱山の地下まで目まぐるしく駆けまわるのが楽しい。山の中腹の屋敷に住む王女と塔のおばあさま(妖精)、鉱夫の少年、そして鉱山に巣食うゴブリンども。舞台設定の妙だよなぁ。
 
タランと角の王 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 1)

タランと角の王 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 1)

ウェールズ古伝説を下敷きにしているらしいファンタジー。仲間を集めて冒険というオーソドックスな感じで、スタート時点での主人公タランの立場が「豚飼育補佐」だったり、嘘をつくと弦の切れる竪琴を持つ吟遊詩人とか、妙な外し具合が面白い。
 
タランと黒い魔法の釜 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 2)

タランと黒い魔法の釜 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 2)

悪の手中にある魔法の釜を奪還する旅に出る。呑気さが抜けなかった1巻にくらべて今回は格段に苦しい行程。裏切りも選択も代償もある。いいよいいよ。
 
森は生きている (岩波少年文庫)

森は生きている (岩波少年文庫)

冬のさなかに咲いているはずのないマツユキソウを探しに行かされた娘が、森に集う12の月の精の協力で花を得る。花を献上された女王はその咲いている場所に連れていけと無理を言うのだが……。いわばシンデレラ譚なのですが、継母や女王など周辺のキャラクターがとにかく強烈ですばらしい。特に女王。死刑と釈放では死刑のほうが書きやすいから死刑、などと傍若無人な振る舞いにしびれる。さらに新年の冬の森に月の精霊が集うといった幻想的な設定もいいし、話の運びも言うことなし。これはいいものを読みました。
 夢中になって一気に読了。戦前から戦後の田舎が舞台といってもわりと見覚えのある風景だったので懐かしく感じました(さすがに身の回りからは減ってきましたが)。よくこういう場所で遊んだなーとか思い出しつつ、子どものうちにこの本に出会いたかったという気持ちも。ともあれ、小人の国の行く末を見守りたいです。
 竹に梅に管狐と、考えてみればこういった小人物語に日本的な風物が登場するのはめずらしいかもしれません。なるほど和製ファンタジーだなぁと。コロボックル通信社の活動には作者の出版経験が生かされているのでしょうか。
 この巻では人間とコロボックルとの関係にフォーカスが移ってきていくらかこぢんまりした印象に。あまり説教くさい方向には進んでほしくないけど、さてさて。