5月第3週

初期から夢記述への過渡的な詩集と言っていいか。のちにつながる表現も散見されるがまだ珍奇さを衒う向きが強く、言葉に振り回されているのをストイックと見るか独りよがりと見るかで評価は分かれるだろう。ただし併録の日記を読めばこの「力んだ感じ」はとんでもなくエネルギッシュな日々に由来するらしいとわかるので、これはこれで意義深いと思う。創作の現場が見れてミーハーな興味も満たされます。
 
闇の中のオレンジ (fukkan.com)

闇の中のオレンジ (fukkan.com)

オレンジ党シリーズに連なる短編集。といっても話と話のつながりはあるのやらないのやらで、それぞれの話も投げっぱなし感が強くてかなり面食らう。これを読んでオレンジ党シリーズの理解の助けになるかといえば一層混乱したというのが正直なところかな。いつもながら禍々しい挿絵には感服させられるけども。
のちにゲームブック作家の思緒雄二が本書を挙げながら、ゲームブックの物語世界を「結びつくと言うよりは、ふと行き過ぎ交差する小さな物語、赤ん坊のような産まれたばかりの言葉たちの、大きく広がってとどまらない宇宙」と表しています(『送り雛は瑠璃色の創土社)。
 
高丘親王航海記 (文春文庫)

高丘親王航海記 (文春文庫)

なぜか機会に恵まれなかったがようやく読めた。絶筆ということでいろいろと思うところありつつ、親王が子どものようになんにでも興味を示す姿が単純に微笑ましかった。好奇心は天竺への旅にまで拡大され、さらに幻想の彼方へ。
ところでこの小説が再読必至なのは論を俟ちませんが、普通に読み返すのではなく、うしろの章から逆順に読んでいくのもひとつの手ではないかと思います。それこそ天竺から日本へ帰るように読めば、また違った感興を得るでしょう。
 
タランとリールの城 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 3)

タランとリールの城 (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 3)

おわーおもしろいおもしろい。相変わらず話が手っ取り早くてぎゅっと濃縮されてるような面白さ。エイロヌイの魅力はやっぱりよくわからないけどアクレンいいじゃないですか。次巻以降で活躍するのかな。
 
旅人タラン (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 4)

旅人タラン (児童図書館・文学の部屋 プリデイン物語 4)

豚飼育補佐タランの遍歴修行編。物語世界に大きな変化こそありませんが、苦悩しながら旅を続けるタランの姿は胸を打ちます。「自分の足あとだけをたどって歩く者は、結局歩きはじめたところにもどるだけだ」なんて言葉がさらっと出てくるのが凄い。
 いよいよアヌーブンとの決戦へ。最終巻も期待にたがわず面白い作品でした。ベルガリアード・マロリオン物語みたいに新装版が出てもいいと思うんですけどね。
 
一〇〇年前の世界一周

一〇〇年前の世界一周

写真の鮮明さと自然な着色に驚いた。しかしまあ見る分にはアメリカ大陸の写真が面白かったですよ。地下鉄の走る都会と西部劇そのままの西部。文章が読み応えあるのもいいですね。
 
王女とカーディー少年 (母と子の図書室 マクドナルド童話全集 2)

王女とカーディー少年 (母と子の図書室 マクドナルド童話全集 2)

『王女とゴブリン』の続編。主人公カーディー少年が前作では排斥された異形のものどもを引き連れて王都の腐敗を正す。価値の転倒とともに、外見によらない正しい心を持つものが正しい道を歩むといった点が常に意識され、一本筋の通ったところを感じさせる。ただしそれはとても困難なことであるとして思いもよらない結末に収束した。読後感は苦い。
 
きえてしまった王女 (母と子の図書室 マクドナルド童話全集 3)

きえてしまった王女 (母と子の図書室 マクドナルド童話全集 3)

甘やかされて育ったために自分のことを「ごりっぱさん」と自惚れる二人の女の子のお話。少なからず自分にもそういったところがあるので、それほど長い物語ではないのになかなか読み進まなかった。