この畑では猿を作るという
春のある朝 まだ暗いうちに
大根のような葉を茂らせた畑から
泡の弾けるがごとき音を出して
 
猿が飛び出る
猿が土から勢いよく
無言で かつ しかめつらをして
農家はそれを収穫するでもなく
飛び出た猿がただ
空に浮かび上がって消えるのを
見守っている
 

緑濃い山々からは
猿どもの声が聞こえてくる
否 あれは
春に生まれた猿が育ち
歌を歌っているのだ
びょうびょうと恨めしく
風の間に間にうらぶれて
その時こそ農家は収穫をむかえる
山狩が始まる
 
彼らは猿を許さない
決して許しはしない