5月第1週

「言語が思考を規定する」といった言語決定論を否定し、言語能力が人間にとっていかに生得のものであるかを説く。内容はいいが英文ベースの例文(とその解説)が読みにくくて少々難儀した。
 下巻。恥ずかしながら言語学と進化論が接続するとは知らなかったので、その延長上にある進化心理学や心的モジュールの考え方には蒙を啓かれた。関連領域も見てみたい。
 フランケンシュタインからスピルバーグに至る怪物の系譜をたどる。キーワードは「ブラックボックス」。フランケンシュタインを起点として、ジキル博士、透明人間、ドラキュラなどの怪物作品を歴史・社会の視点から読み解き、具体的な姿形を持つ存在から社会的なシステムへとブラックボックス化する怪物の内実を見つめることが重要だとする。フランケンシュタインの創造者と被造物の関係は現在の科学技術や産業の中にも見出せる。怪物テーマでここまで今日的な問題に迫れるのかと驚かされた。

人間以外としての怪物がどのような存在なのかを決定することが、人間の定義とつながる。そこで、人間を測る尺度を求めて、人間以外の存在としての怪物を見つけだす試みは古代から続けられてきた。怪物と人間の境界線は歴史的・社会的条件に左右される。たえず引き直され、いつでもどこでも通用する普遍的な定義はないし、古代の怪物を私たちがそのまま受けいれることはない。ゴシック小説やホラー小説が書き続けられてきた理由のひとつは、この境界線の引きなおしのためともいえる。

9日、理解がゆるゆるだったので再読。システムと怪物の関係を意識しつつ、双方の内実を見極めることが大切。