7月第2週

ナショナリズム論の古典とのこと。国民という観念が想像の上に成立し、それがモデル化され各地で使い回されていく過程を描き出す。まことに射程の広い論考で古典とされるのも頷けるのだが、それゆえに掴みどころのなさを感じざるを得なかった。言語を介して想像される共同体ということで、まあ言語を持ち出すとなんでも説明できてしまうが、そのようにして想像された国民国家をまず意識するのが重要なのだろう。
 
虫の宇宙誌 (集英社文庫)
奥本 大三郎
集英社
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趣味家の書くものは病が深ければ深いほど面白い。「昆虫図鑑の文体について」など変わった着眼点の章もあり、博物学と文学の中間にある文章が心地よかった。
 
逸脱の日本中世 (ちくま学芸文庫)
細川 涼一
筑摩書房
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日本中世における狂気・性・死生観・遍歴民など、現代から見れば「逸脱」とも映る事柄を、中世芸能を参考に読み解く。地味だがなかなか面白かった。地味だが。
 
行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)
友野 典男
光文社
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雑に読んでしまったので理解が曖昧になった。従来の経済学が想定していた超合理的に行動する経済人に疑義を呈し、人間の心のはたらきを重視して経済を見る「行動経済学」を紹介する。とりあえずはヒューリスティクとバイアス(偏見)の概念だけ頭に置いておこう。
 
蝶 (文庫クセジュ 284)
蝶 (文庫クセジュ 284)
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ギー・マトー
白水社
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これはアイテムとして持っておくという感じで。
 
僕たちは池を食べた
僕たちは池を食べた
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春日 武彦
河出書房新社
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短編集。さすがにプロの精神科医が書いただけあって、妙に地に足がついた筆致が嫌な気分を盛り上げる。特に、人が狂っていく描写は、あまりにさりげなく日常に狂気が混入していくのが静かな凄みを感じさせるほど。その反面、人間の心の不思議さを思い知らされる部分もあって、まあ読まなくてもいいけど読めてよかったという玉虫色の感想を持った。何とも言えぬ立ち位置の一冊。この人の本はどれもそうかもしれないが。
 
触身仏―蓮丈那智フィールドファイル〈2〉 (新潮文庫)
北森 鴻
新潮社
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あざとい! だがそれがいい