8月第4週

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)
内田 樹
文藝春秋
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フーコーレヴィ=ストロースを読むにあたって周辺の知識の必要を感じたのでこれを。かなり内田樹の色が強い気がするけど概観するには便利だと思う。主体を問うのが構造主義の大きなテーマだということがわかるし、どこから手をつけていいのかわからなかったバルトの取っかかりを得られたのが個人的には大きい。あとでざっと再読予定。

エクリチュールとは、書き手がおのれの語法の『自然』を位置づけるべき社会的な場を選び取ることである

 

アスディワル武勲詩
アスディワル武勲詩
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クロード レヴィ・ストロース
青土社
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北米インディアンの間に伝わる土着神話を比較分析し、神話構造や差異を明らかにする小論。解説にもあるが理解しやすい模範演技という感じで、神話分析の方法論を一瞥できる。神話を異伝の総体と考えたとき、知られた全異伝といえども偶然に残されたものと考えるならば、そこに隠されている可能的諸形態も考察の範囲に入るので、別に継起性にとらわれる必要はない。実際にテキストは残されてなくても材料から推定できるならどんどんやっちゃっていいということかな。
 フローベール『聖アントワーヌの誘惑』『ブヴァールとペキュシェ』の読解を通して、十九世紀に発見された想像力の空間「図書館」の形式を論じる。それはすでに書かれた書物の寄せ集めであり、反復であり、書物の書物である。ジョイスボルヘスへと連なるこの系譜は、創作行為の特権性の否定、作者の失効を意味する。フーコーの思想を考え合わせると、人間や主体概念の否定と関連するだろうか。訳者による丁寧な解説が嬉しい。
 
蝶 (文春文庫)
蝶 (文春文庫)
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皆川 博子
文藝春秋
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(読んだのは単行本)
初めての皆川博子。漠然と耽美な感じなのかと思ってたら予想を超えて骨太だった。全編を通して、時代に置き去りにされたものの悲哀と狂気が、美しい詩や句になぞらえて描かれる。集中で好きなのは、読後にタイトルが陰々と木霊する「想ひ出すなよ」、人ならぬものの手を借りた残酷な恋愛譚「龍騎兵は近づけり」。こういう作風って情動に走るせいでぐだぐだしそうなんだけど、きちんと抑制を持って知的に構成されている(龍騎兵〜は特に見事)。容赦がほとんどないところもいい。また好きな作家が増えました。
 
庭にくる鳥 (みすずライブラリー)
朝永 振一郎
みすず書房
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物理学者が身のまわりの出来事や思い出を綴ったエッセイ。こういう気負いのない文章を読むとほっとする。
 
問題は、躁なんです   正常と異常のあいだ (光文社新書)
春日 武彦
光文社
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近年、鬱病はよく取り沙汰されるが躁病はあまり話題に上らないとして、啓発的に論じる。躁はポジティブに考えられがちであるが、症状が深くて治療に手間がかかり、その裏には不安や絶望を抱えながら、表面を過剰に取り繕う心性が働いているという。飛行機に関する事件を多く引いているのが、躁的な要素(全能感・衝動性・自滅指向)の「ふわふわ」した感じとマッチしている。なお、医学的な説明も付録に用意されている。