12月第1週

「分裂と混血による超ジャンル」としての小説を、後藤明生の方法論に即して論じる。日本の近代小説の和魂と洋才の接合を分裂・矛盾・混血と捉え直し、それらを客観的に、方法・批評的に見ることの必要性を説いている。さらに言うと、小説は本来的にそのような方法のもとに成り立っており、外からの視線=模倣と批評によって成立してきた。内と外、自己と他者の間に楕円の焦点を結ぶのが小説である。この本自体が「超ジャンル」的でいささか雑然としているが、小説の歴史を総ざらいした最後二章だけでも読む価値がある。非常に勉強になった。