2月第3週
地下世界―イメージの変容・表象・寓意 (テオリア叢書)
posted with amazlet at 12.02.19
祖母のいとこが残した一片の動物の皮をきっかけに、チャトウィンは「世界の果て」パタゴニアを旅する。無数のエピソードで構成された旅行記で、移民、山師、ギャング、亡命者、インディオと、世界の果てに流れていった人々の生が抑えたトーンで語られる。あたかも皮から動物を再構築するように、それは寄り集ってパタゴニアの風景を形作る。
祖母のいとこことチャーリー・ミルワードの物語がべらぼうに面白かった。もしこの人の話がまとめられることがあれば読んでみたい。
52章において語られるチロエ島のブルへリア(男の魔法使い)の伝説は、エリック・マコーマック「パタゴニアの悲しい物語」でもやや形を変えて語られている。また、パタゴニアでミロドン(ナマケモノの祖先)を探すモチーフも同じ。おそらくマコーマックはチャトウィンを参照している。
このブルへリアの伝説はマコーマック『パラダイス・モーテル』にも大幅にアレンジされたものが登場する。『パラダイス〜』にはホーソーン「ウェイクフィールド」も使われており、もしかするとそういった数々のエピソードを編み込んだ一冊なのかもしれない。
チャトウィンを読んだのはゼーバルトがエッセイで言及していたからなのだけど、予期せず好きな作家が一本のラインに繋がった。マコーマック-チャトウィン-ゼーバルト。