2月第3週

地下世界―イメージの変容・表象・寓意 (テオリア叢書)
ロザリンド ウィリアムズ
平凡社
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地下世界を技術・社会の発展によって見出された人工環境と位置づけ、それがどのように現実とフィクションに現れたかを論じる。ポーやヴェルヌ、ウェルズらの作品において地下は技術の象徴であり、それは当時のイデオロギーや状況を反映している。考古学、地学、進化論…、ベーコン以来の「真理を地下に求める」運動。自然を技術の名のもとに征服してきた我々の文明は、地下世界を切り開くとともに地下世界に囚われているのではないか、という問題提起はなかなかに重い。
 
パタゴニア
パタゴニア
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ブルース チャトウィン
めるくまーる
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祖母のいとこが残した一片の動物の皮をきっかけに、チャトウィンは「世界の果て」パタゴニアを旅する。無数のエピソードで構成された旅行記で、移民、山師、ギャング、亡命者、インディオと、世界の果てに流れていった人々の生が抑えたトーンで語られる。あたかも皮から動物を再構築するように、それは寄り集ってパタゴニアの風景を形作る。
祖母のいとこことチャーリー・ミルワードの物語がべらぼうに面白かった。もしこの人の話がまとめられることがあれば読んでみたい。
52章において語られるチロエ島のブルへリア(男の魔法使い)の伝説は、エリック・マコーマックパタゴニアの悲しい物語」でもやや形を変えて語られている。また、パタゴニアでミロドン(ナマケモノの祖先)を探すモチーフも同じ。おそらくマコーマックはチャトウィンを参照している。
このブルへリアの伝説はマコーマック『パラダイス・モーテル』にも大幅にアレンジされたものが登場する。『パラダイス〜』にはホーソーンウェイクフィールド」も使われており、もしかするとそういった数々のエピソードを編み込んだ一冊なのかもしれない。
チャトウィンを読んだのはゼーバルトがエッセイで言及していたからなのだけど、予期せず好きな作家が一本のラインに繋がった。マコーマック-チャトウィン-ゼーバルト