4月第3週

死の海を泳いで―スーザン・ソンタグ最期の日々
デイヴィッド リーフ
岩波書店
売り上げランキング: 270814
息子によるルポルタージュ。癌を患った最晩年の日々が綴られている。常に意志の力で人生を拓いてきたソンタグは、死に臨んでも希望を手放せず、死と折り合いをつけることができなかった。希望しかないゆえの絶望の日々が、確実な結末に向かって進んでいく。ソンタグの核心に迫った本だとは思うがこれはつらい。
 
カネが邪魔でしょうがない 明治大正・成金列伝 (新潮選書)
紀田 順一郎
新潮社
売り上げランキング: 213413
鴎外「百物語」のモデルとなった人物・鹿島清兵衛が紹介されているとのことで手に取った。時代への先見性と進取性を持ち、財力を誇示して華々しく散っていった「成金」の姿が、合理一辺倒の現代にあっては眩しく映る。ノスタルジーまじりに怪人たちの業績をたどる面白い一冊。
 (読んだのは創文社1958年版・一巻本)
中世末期フランスおよびネーデルランドの文化を論じた古典的研究。中世をルネサンス前夜の暗い時代と位置づけることを避け、ルネサンスへと漸進的に発展していくものとする。様々な中世文化を取り上げながら、それがどのような精神の上に成り立っていたか、人々がどのような幻想に生きたかが論じられており、文化史というよりは心性史に近い。あくまでも人々に寄り添うやり方は、敬虔と野蛮を併せ持つ中世人をいささかなりとも身近に感じさせてくれる。読んでいる間とても幸福だった。