5月第1週

1861年に起きた二つの事件を追うことで、英国における「センセーション」熱の盛り上がりと、それが小説に与えた影響を見る……ということなのだがなんだか浅かった。過熱するジャーナリズムとともにセンセーションを求める波も高まり、それに応える形で演劇や小説はよりセンセーションを、よりリアルを追求した。まあ、野次馬根性が小説の発展に一役買っている、と。
 
フランケンシュタインの影の下に (異貌の19世紀)
クリス ボルディック
国書刊行会
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神話は異本を生み出す発展性こそが重要とした上で、「死体の部分から造られた怪物が創造者に反逆する」という筋を持つフランケンシュタイン神話の発展を検討する。俎上に上がるのはホフマン、ホーソーンメルヴィルディケンズコンラッド、ロレンス、後期ヴィクトリア朝の恐怖小説など。また、社会にもそのアナロジーの範囲を広げ、「啓蒙主義から生まれ出た」フランス革命マルクスの大衆へと論は及ぶ。フランケンシュタインそのものへの言及は少なめ。わりと堅い本である。
 19世紀英文学を中心として各分野に波及していった「細部の追求」という傾向について論じる。ロマン主義を継承したヴィクトリア朝の小説は、古典的な形式を脱して細部/内面を追求するあまりに全体としてはぶくぶくと不恰好なものになり、他分野へと同様の傾向を広めるとともに、美術においてはピクチャレスク、建築においてはゴシック等の概念を摂取した。それには近代の時代精神が関与している、ということらしい。ちょっと雑に読んだ。

十九世紀におけるグロテスクの機能のひとつは、高尚を低俗から分離する文学上の階級制度を転覆させることにあった。