7月第5週

短篇だけ選んで読んだ。深沢七郎楢山節考」「東北の神武たち」「南京小僧」、三浦朱門「冥府山水図」「セミラミスの園」、水上勉「桑の子」「棺」「こおろぎの壺」。深沢七郎はやはり「楢山節考」が飛び抜けているがあとの作品もよかったし、三浦朱門の二作は幻想的な文章に酔える。古い本の中でこのような作品に出会えたのは望外の喜びであった。水上勉「こおろぎの壺」は中国人作家・老舎との交流を描いたもので、再会の約束が文革によって潰え、幻想の中で成就する。清々しい佳篇。
 
燃焼のための習作
燃焼のための習作
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堀江 敏幸
講談社
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嵐に降り込められた事務所での三人の会話。それは迂回に迂回を重ねて記憶の層を撹拌し、互いの過去と現在を浮かび上がらせる。ごく些細なこだわりや感覚が丁寧に拾われており、読み終えた時、何も変わってないように見えて何かが確実に変わっている。時間をかけて読んだ甲斐があった。