『青白い炎』第一篇(その1)

ナボコフ『青白い炎』の詩篇を訳していきます。過去に詩を訳した経験がなく、語学力も雀の涙なので、かなり苦しいものになると思いますが、自分が味わうことを第一義にやっていきます。アドバイス等ありましたらtwitterなどで伝えていただけると幸いです(微調整は継続的にやっていきます)。
底本は『筑摩世界文学大系(81) ボルヘスナボコフ集』とこちらのサイト。また、前掲書の富士川義之氏の訳業を参考にしています。
 
……
 
わたしは影だった、窓ガラスに映じた偽の青空に
殺された連雀の影だった。
わたしは灰色の羽毛の染みだった――しかもわたしは
反射した空を、生きて飛びつづけた。
また部屋の中からも、二重に映して見たものだ
わたし自身を、ランプを、皿に盛った林檎を。
夜の帳を取り払い、暗いガラスに
家具がみな草上にあるように飾ろう
ああ、なんと喜ばしいことだろう
降り積もった雪が芝生を覆い、そしてその上に
椅子とベッドがすっくと立つのは
出て行こう、あの水晶の国へ!
 
降る雪をふたたび拾い上げよ。
ゆっくりとぶざまに舞い落ちる、不揃いでくすんだ雪のひとひら
日の青白さ、あやふやな光につつまれた抽象的な落葉松
それらを背にしたどんよりと暗い白色を。
それから夜が見る者と風景を結びつけるにつれて
徐々に濃くなっていく二重の青色を。
朝になると、霜のダイヤモンドが
驚きの声を上げるのを聞く。足に拍車をつけた誰が
空白のページのような道に、跡をつけていったのか?
左から右へと冬の記号を読み解くのだ。
ぽつ、ぽつ、歩みを刻む矢印。もう一度。
ぽつ、ぽつ、歩みを刻む矢印……雉子の足跡!
首飾りをかけたおまえ、気高き雷鳥
おまえは我が家の裏手に朋輩を見つけた。
来し方を指し示す矢印のような足跡を持つ彼を
シャーロック・ホームズ』で見かけなかったか?