『青白い炎』第一篇(その2)

あらゆる色彩がわたしを愉しませた。灰色でさえも。
わたしの眼はまさしく写真機のようにはたらいたのだ。
心のおもむくままに眺めたり、あるいは、興奮を抑えつつ
無心に見つめるときにはいつでも
視界に入るものは何であれ――
室内の風景、ヒッコリーの葉、ほっそりと凍りついた
雫の短剣――
さまざまなものが、瞼の奥に写し取られた。
それらはそこに一、二時間もとどまったが
とどまりつづけているあいだ、わたしに必要なのは
葉を、室内の風景を、軒下の氷柱を、よみがえらせるために
ただ眼を閉じることだった。
 
それにしてもなぜだろう。湖畔道路を学校へと向かうときには
湖から、われらが学校の正面玄関を見分けられた。
けれども今は、一本の木にすら遮られていないのに
どんなに目を凝らしても、屋根さえ見ることがかなわない。
おそらく空間にわずかな狂いが生じ
それによって引き起こされた歪みや偏りのせいで
ゴールズワースとワーズミス――隣家と学校――の間の四角い緑地に建つ
木造の家や貧弱な眺めに、取って代わられたのだろう。
 
わたしはヒッコリーの若木を持っていた。
深い翡翠色をした豊かな葉と暗がり、貧弱な
虫食いだらけの幹――そのすべてが好ましく感じられた。
夕日が黒い木膚を褐色に染め上げ、周囲には
ほどけた花輪さながらに、葉叢の影が落ちたものだった。
それが今やどっしりと、荒々しく育った。そう、申し分なく成長したのだ。
白い蝶がラベンダーの茂みをひらひらと飛び
その木陰をくぐり抜けて、小さな娘のまぼろしのぶらんこを
穏やかに、やさしく揺らしている。