『青白い炎』第一篇(その3)

家自体はさほど変わっていない。翼棟をひとつ
改築しただけだ。その翼棟にはサンルームがあり
見晴らし窓のそばには、意匠を凝らした椅子が備え付けてある。
身動きの取れぬ風見鶏に代わり、今は
大きなペーパークリップ状のテレビアンテナが光っていて
無邪気な、薄絹のようなモノマネドリが
彼女の耳目に触れた物事のすべてを語りに、しばしば訪れた。
チッポー、チッポーという鳴き声から
トゥーウィー、トゥーウィーという澄んだ声に変わり、それから
カム・ヒア、カム・ヒア、カム・ヒルルル……と金切り声になる。
尾を高く上げて振ったり、そっと上に飛び跳ねたり
優雅に翼をばたつかせていたかと思うと、突然(トゥーウィー!と鳴いて)
彼女の止まり木に――真新しいテレビアンテナに――戻っていくのだ。
 
両親が死んだとき、わたしはまだ幼かった。
二人とも鳥類学者だった。わたしは
彼らを呼び起こそうと数知れぬ努力を重ねた。
だから今では千人もの両親たちに囲まれている。が、残念なことに
彼らは、彼ら自身の光輝に溶けて薄れてしまう。
しかしある言葉、ことあるごとに見たり聞いたりするある言葉
たとえば「心臓病」はいつでも父への思いを胸に呼び覚ますし
膵臓癌」は母への思いを鮮明にさせる。
 
黙示録を経験した人――つまりわたしは、冷たい巣を持っていた。
ここはわたしの寝室だったが、今は客室として取ってある。
カナダ人の女中に押し込まれたこの部屋で
階下のざわめきに耳を傾けながら、皆のためによくお祈りをした。
叔父さんや叔母さん、女中や、教皇に会ったことがあるという
女中の姪のアデール、本の中で出会った人々、そして神が
いつまでも変わらず、健やかでありますように。